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上鶴重美:「ワークショップ/ICN中心的プログラム」ICNPの今後を展望する2つのプログラム、看護、200, 53(11), 42-43

 看護を社会にアピールするために、看護実践を言語化し世界規模で標準化を図ろうと1991年から始まったICNP®(International Classification for Nursing Practice、看護実践国際分類)も10年が経過した。1996年の第一草案・アルファバージョンに続き、1999年に改訂版ベータバージョン注1)が出たことで、作業は一段落した感がある。これまでの疑問「ICNP®がなぜ必要か」はクリアし、「ICNP®をどのように発展させてゆくか」という新たな課題への取り組みが始まっている。

 ワークショップ「看護実践国際分類:開発と維持」は、開会式もまだ執り行われない大会初日の朝にあった。60ほど椅子が並ぶ狭い会場には続々と人が集まり、壁際に立ったり床に座ったりする人もいて100人以上の参加となった。
 まず、プログラムディレクター・Amy Coen(米国)がICNP®の現状を簡単に説明。長期的展望のプロジェクトであり、継続的な発展のためには世界各国の団体と個人、両レベルからの積極的な協力が期待されている。ベータバージョンは20カ国以上で翻訳・検討され、新しい用語の提案や、用語や定義の修正案も提出されている。これから取り組みを始める国の参考になるよう、ノルウェイ、スロベニア、ボツワナの代表が各国の状況を紹介した。
 ノルウェイからIrene Henriksen Aune氏と Kathy Molstad氏が報告。翻訳はバイリンガル・ナース1名が行い、それを28の専門グループが検討したという。また、CCU患者30人分の「循環」に関する記録、ナーシングホーム入所者60人分の「排泄」に関する記録でICNP®用語との一致率を分析。看護現象47-69%、看護行為27-35%が一致し、ICNP®の有用性を判断したそうだ。「ICNP®導入時には、観察項目中心から看護過程を反映する記録へと転換が必要だが、思考過程も変える必要がある」との指摘があった。「SとOばかりでAがない」と言われる日本の現状と類似していそうで興味深かった。
 ボツワナでは1997年からケロッグ助成金を受け、地域看護の視点からICNP®検討を進めている。新しく提案した30語と定義を見直すべき用語についてGeetha Ferringa氏が報告。提案された用語に「dustホコリ」があった。乾燥地帯では健康を害する原因として重要だという。また「water storage貯水室」など、医療施設とは異なる定義が必要だと指摘していた。ICN会員国の実践場の多様性に驚くとともに、世界的標準化の難しさを痛感した。
 1993年にICNに加盟したスロベニアからは、Bojana Filej氏とPetra Kersnie氏が報告。予防的役割を反映する用語、ICNP®の活用を具体的に示す実用マニュアル、実践現場に持ち歩けるような簡易版などの必要性を訴えていた。これらの意見には会場からの賛同も多かった。ICNP®はコンピュータ上での使用を前提にしているが、システムを持たない現場での活用は今後の課題だろう。ICNP®をどのように普及・教育するか方法論を確立すべきとの意見も出た。

 会議三日目の夕方、7人のパネルによるパネルディスカッション「看護実践国際分類最新情報:各国のプロジェクトとパートナーシップ」があった。同時通訳の可能な広いホールで行われたが、前回とは対照的に参加者はまばらで空席が目立った。タイ、スウェーデンから取り組みの報告があり、最新情報としてICNがIMIA-NI注2)と協力しているプロジェクトが報告された。
 「名前を付けることができなければ、コントロールすることも、財源を確保することも、研究することも、教えることも、政策に反映させることもできない」とICNP®の意義を端的に言い表したNorma Lang氏(米国)が、「なぜICNP®が必要なのか」をまず説明。続いてMarianne Baernholdt氏(米国)が、ICNP®は重要な検索ツールであることを実例で示した。
 Marga Coler氏(ブラジル・米国)はICNP®の看護現象・B軸・判断についの問題点を言語学の視点から解説していたが、専門的かつ高度で難解だった。
 スウェーデンにおける取り組みをMargareta Ehnfors氏が報告。表現に問題があると思われた言葉も、ICNP®の原型を維持するべくオリジナルに忠実に訳したという。ICNP®に対しては、定義を見直すべき、健康良好の状態も含めるべき、患者の経験・参加といった視点を入れるべきなど意見が出ているそうだ。EBNを実行すべく、褥瘡と栄養不良のケアにICNP®で標準看護計画を作成しているという。
 スウェーデンと異なりタイではICNP®を理解しやすいように修正翻訳したとRutja Phuphaibul氏は言い、24時間の看護活動をICNP®で分析していた。タイでは多くの国立病院を抱える厚生省看護課がICNP®ユーザーとして、プロジェクトを支援しているそうだ。
 IMIA-NI会長のVirginia Saba氏(米国)がICNと取り組んでる“Reference Terminology Model for Nursing(看護のための参照用語モデル)”について報告。IMIA-NIとICNが国際的看護情報の標準化に向けたモデルの必要性をISO(International Standard Organization)に提案したところ承認され、作業が進行中だという注3)
 最後に米国のSuzanne Bakken氏がICNP®はInterface・Administrative・Referenceのうちどの視点を持つ用語分類か明確にすべきだと意見を述べた。現在のICNP®には、看護記録用の“Interface Terminology”、管理的な“Administrative Terminology”、データ再利用の“Reference Terminology”が混在しているという。各国からの意見を取り入れますます分厚くなりそうなICNP®にとっては貴重な指摘だと思われた。
 ワークショップとパネルディスカッションの他にも、ICNP®や看護用語、看護情報に関するシンポジウムや一般演題がいくつもあった。ICNP®と看護情報学との密接なつながりを実感するとともに、日本でのICNP®翻訳・検討に関わっている身には、貴重なネットワーク作り、情報交換の場になった。

注1)ICNP®ベータバージョンの情報はインターネットから入手可能http://www.icn.ch/icnp.htm。日本看護協会・ICNP_検討委員会では日本語訳を作成・検討中。

注2)IMIA-NI(Nursing Informatics, Special Interest Group of International Medical Informatics Association)は1982年成立。IMIA加盟国から各一名の代表ナースで構成され、現在27カ国の代表メンバーがいる。日本代表・広島大学医学部保健学科・水流聡子氏。

注3)ISO/TC215 Working Group 3 N142 New Work Item- Integration of a Reference Terminology Model for Nursing. ISO/TC215はHealth Informaticsに関する委員会で、第三ワーキング・グループISO/TC215 WG3はHealth Concept Representation に関するもの。“Integration of a Reference Terminology”はNursing Concept RepresentationとしてWG3のサブ・グループ作業に位置付けられている。
「ICNP®のコピーライトについて」'About the Copyright of ICNP®'
(社)日本看護協会「看護実践国際分類研究プロジェクト」
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